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その様子を見つつも、母から買い物を頼まれた私は、財布を持って外に出る。
昨日までは雨が続いていたのに、今日はからっとした天気だった。
熱の篭ったアスファルトの上をゆっくり歩きながら、私は父の人差し指を思い浮かべてみる。
ピコピコと動く短い人差し指は、私だけでなく、周りの人も幸せな気分にさせてくれる。
そして、眉をハの字にして笑う、その表情は私の人生でなくてはならないものになっていた。
私の父は、右手の人差し指が短い。
そして口下手で、自分の気持ちを言葉にするのが苦手な、不器用な人だった。
でも、私はそんな父が大好きだ。
人差し指の欠けた右手で、頭を撫でられるのが好きだった。
公園で遊んだ帰り道に、短い人差し指を握って歩くのが好きだった。
そんな父には、私の娘が結婚するまでには、生きていてほしいと思っている。
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