つめたい邂逅

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 ざぶんという音とともに、私の身体は宙に浮かんだ。  冷たい。とにかく冷たい圧迫感が全身を襲ってくる。  重力は感じない。どちらかといったら、浮遊感に近い不思議な感覚が、はっきりと頭の中を支配していた。  自分のいる場所を確認しようとしても、顔の上半分を覆った包帯のせいで、視界は黒しか映っていない。  呼吸しようとしても空気は少しも入ってこず、むしろ出ていくばかりだった。  ぼこぼこという振動が、辺りの空間に響いている。  初めはひやりとした感覚が気持ちよかったのだが、だんだんと胸の中に黒いものがせり上がってくる感覚に変わっていった。  その黒いものの正体を探ろうとして、身体が少しも動かせないことに気付く。  とてもむず痒い感じだった。  なのに、これからどうなるのだろうなんて、私はそんなことを考えていた。
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