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◆
水圧が更に強くなったような気がする。だが、今の私には、そんなことはどうでも良かった。
私は今、空の中に沈んでいるのだ。
私の周りを漂っているのは、空の水。なんて冷たいのだろう。
思えば、手術を受けた後に目を開いた時に見た、数えきれないほどの色もそうだった。
今まで見たことのないものに出会えたというのに、それでも感動は湧いてこなかった。
ただ、淡々と邂逅を果たしていたのだ。
そんな中、空の色だけは私を魅了した。
きっと、日頃から慣れ親しんでいた水の色に似ていたからなのだろう。
「う……」
身体が思うように動かなくなっていく。
全方位から感じる圧迫感も、徐々に強くなっていく。それに従って、意識も水を継ぎ足していくように薄くなっていく。
どんな初めてにも、淡々と邂逅を果たしていった私は、最後には唯一感動したものに包まれている。
ああ、なんか私って満たされてる。
意味もなく、自然に口が弧を描いていく。
そして、それさえも掻き消す程の力が私を包み込んでいく。
これが眠ることなのかと思った途端に、ごぼりと一際大きな気泡が口から飛び出した。
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