夜明けの星空

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 ぱちり、と目が覚めた。すぐに時計を見ると、まだ3時半過ぎだった。  昨夜は、いつも通り23時半に寝たはずだ。それでも眠さは微塵も感じない。むしろクリアな気分だった。  そんな時はアレだ、コーヒーでも飲もう。  早速台所に行き、棚からコーヒー豆を取り出す。  その豆を専用の機械でガリガリと挽いていく。無心になって挽いた後は、お気に入りのマグカップにペーパーフィルターをセットして、中に挽いた豆を入れる。  そしてペーパーフィルターの上から、のの字を書きながらお湯を注いでいく。ボトボトとカップの上に落ちていく液体を眺めながらも、僕は注ぐのを止めない。  程なくして、香ばしい香りが辺りに漂ってきた。  少しずつ溜まってきた液体を確認して、マグカップの口の上に固定していたペーパーフィルターを外す。  マグカップを持ったままベランダに出て、街を眺めてみる。  まだ太陽は起きていないようで、街は暗闇に包まれていた。それでも、何となくどこに何があるかくらいは見える。  すっかり寂れたごみ収集所、ジオラマのように並ぶ住宅、随分と遅いお帰りであるカップル、道路の隅をコロコロと転がるビニール袋。  それらを無言で見つめる。時にじっと観察したり、ぼんやりと輪郭を見るように目のピントを緩めたりしてみる。  そうして街を観察しつつもズ、と湯気の立っているコーヒーを啜る。  ピリッと舌に熱さと苦みが伝わり、それが僕の心を少し掻き立てる。  コーヒーを啜りながら、上に視線を向ける。  夜明けが近いからか、殆どの星は自ら身を隠しつつあった。残った星はどれも弱々しく瞬いており、注意して見ないと見逃しそうな程である。 『私はねぇ、星になるの』  不意に女性特有の甲高い声が耳を掠める。  もう、ここにはいないと分かっていても、それでも聞こえてくる。あの人──ナツメの声が。 『星ってさ、自分の力で瞬いてるの』
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