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黒のロングコートで、頭にフードをかぶっている不審者がいた。
だが、おかしい。
何故ならその不審者、横幅があり得ないくらい広かったのだ。
俺はその光景に、少しの恐怖感と期待感を覚えた。
──漫画のような展開になるんじゃないか、と。
(お、松平だ)
俺が不審者を見つけてから一分も経たない内に、体育教師の松平が竹刀を持って奴に近づいた。
どうなるのだろうか。
俺は固唾をのんで見守る。
「──では新庄、続きを読んでくれ」
「は、はいっ!?」
突然の指名に、俺は変な声を出してしまった。
クラスの中に笑い声が響く。
……恥をかいてしまった。
俺は顔を赤くしながら、外がどうなったか知りたい為に急いで読んだ。
「よし、もういいぞ。では次──」
読み終えた俺は一回一息つき、待ちに待った窓の外を眺めた。
だが──なにもいない。
松平も不審者も誰も。
(……ただの不審者だったのか)
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