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「そんな中、それでも久弥はアメリカの大学でMBAを取って、東京の支社長なんだから……たいしたものだよ」
私と同じ気持ちなのだろう、目を細めながら苦しげに漏らす彼。
「……梓さん、久弥に面会に行くといい」
強い口調で告げた彼に、戸惑いながら視線を合わせた。
「……杉田さんは?」
静かに尋ねた私に、杉田さんは小さく首を振った。
「僕の恋はとっくに終わってる。
こうして無事が分かったことで、ようやく久弥から卒業できそうだ」
新聞の写真に、そっと指を乗せてた。
「……杉田さん」
「今は今で、ちゃんと恋人がいるしね。大事にしたいと思っているから」
杉田さんはそう言ってニコリと微笑んだ。
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