第1章

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血色のない白く乾燥した足がやけに寒々しい。 足元に目をやり、お気に入りの花柄のスリッパを探したけれど、見つけることが出来なかった。 「……」 まあ、いっか。 最近は何だか物忘れが激しい。 夕食の配膳をしながらも、何か忘れているような気がして落ち着かない。 キッチンに戻ってはみるものの、どうしても思い出せなくて。 何を忘れているのかがわからないんだから、笑うに笑えない。 一度や二度ならまだしも、最近は頻繁だ。 不安だけが残ってしまって、消化不良のままダイニングとキッチンをオロオロと往復する時間だけが過ぎていく。 そういえば、―――。 臣君の薬、そろそろ切れるんじゃないかな。 忘れないようにメモしとかなきゃ。 真っ暗な中、素足のまま寝室を出て廊下をひたひたと歩く。 光と音の漏れるリビングのドアの前まで来ると、ザーッという音がいっそう激しくなり、思わず開けるのを躊躇った。 ――――――!! 「な、何、これっ……」
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