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代わりに読めと言われれば、そうするつもりだった。
だが、これ以上首を突っ込むべきではないという思いもある。
玲奈を心配すると同時に、それとは全く別で、純粋に彼女の父の若い頃の恋愛模様にも興味が湧いてしまったから。
何十年も昔の日記がこうして残っているのだ、他人が面白半分で荒らして良い思い出ではないだろう。
全てを玲奈の意思に委ね、みのりは質問を発した。
迷い、躊躇い。
俯いたままの玲奈に見え隠れするのは、不安と一縷の希望。
疑いが晴れれば良い、だがもしその逆だったら、待っているのは今以上の絶望だ。
静寂が部屋を支配し、みのりも亮も、じっと玲奈が答えを出すのを待った。
その重苦しい沈黙を破ったのは、外からドアをノックする音だった。
「玲奈――、開けていい?」
「お母さん!?」
ドア越しのそのやり取りに、みのりと亮ははっとして顔を見合わせた。
全く気配がなかったからすっかり居ないもののように油断していたけれど、玲奈の母親は留守だったわけではない。
玲奈は最初に、確かに『母が寝ている』と言っていた。
みのりが咄嗟にノートを缶に戻すと、亮がそれに素早く蓋をした。
あんなところに隠してあったのだ、他人が勝手に持ち出して中を見たと知ったら。
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