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「すぐに本当のこと、話してあげられなくてごめんね玲奈……」
母親の謝罪に、玲奈は無言で俯いた。
腹を割った親子の対話が始まろうとしている。
このまま同席しても良いものだろうか。
気まずい沈黙の中みのりがこっそりと亮を窺えば、彼もやはり居心地の悪そうな顔をしている。
「あの――席、外しましょうか俺たち。いや出直した方が良ければ、今日は……」
と、辞意を切り出したのは亮の方だ。
みのりにはその沈黙を破る勇気がなかった。
だが玲奈の母親は首を横に振った。
「どうかいてやってください。娘が全てを受け止めきれなかった時、そばで支えてあげて欲しいの」
そう静かに頭を下げられると、それ以上強くは言えない。
そばにいたところで、自分には何も出来ないような気がみのりにはしていた。
先ほどからずっと、肝心なところで何度もパニック障害のような症状の兆候が出かけている。
亮のフォローがあったから何とかここまで正気を保ってこれたが、状況とバランスを見たら自分は完全にお荷物。
――ああ、そうか。
ふ、と気が付いた。
玲奈の母親は、亮に頼んだのだ。
玲奈をそばで支えるべきなのは、亮だ。
亮が支えるべき相手は自分ではなく、玲奈だ。
折を見て1人で静かに立ち去ろう、そう決めたみのりを、玲奈の母親の視線が絡め取った。
「あなたが見つけてくれたのかしら」
ぎくりとした。
やはり、咎められている?
だがそれを理由に向こうから追い返してくれるのならその方が楽、と言ってしまえばその通りである。
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