10/11
前へ
/228ページ
次へ
「あの……私、ここにいていいんですか?」 思い切ってそう聞いてみると、周りはそろってきょとんとしている。 亮が肘で突き、「それさっき俺が聞いただろ」と小声で耳打ちしてきた。 思わず「だって」と言いかけた時、玲奈が口を開く。 「お母さんがみのりを追い出すつもりなら、私がお母さんを追い払うわ」 「えっ!」 慌てるみのりを尻目に、玲奈の母も可笑しそうに笑っている。 「あらあら、じゃあ尚更、いてもらわないと困るわねえ」 いつの間にか、随分和んで寛いだ空気が出来上がっていた。 ついさっきまではピリピリと張りつめていなかったか。 何が流れを変えたのかみのりには考えつかなかったが、それでも先ほどまでのような居心地の悪さはない。 玲奈の母親が、中央に置かれた缶に静かに手を伸ばした。 どうやら、話が始まる。 その場の全員が無意識に背筋を伸ばした。 「はじめからこれは玲奈に見せなきゃと思っていたんだけど……どう切り出して良いのか分からなくて。私も中々心の整理が付かなかったし」 言いながら、彼女は缶の蓋を外す。 「いつか……そう思いながら、あんなところに隠したままにして。そのせいで玲奈を余計悩ませて、苦しめてしまったわね」 缶の中身をひとつひとつ確認しながら並べていく。 どうやら古い順に直していっているようだった。 「みのりさん。見つけてくれてありがとうね」 突然呼ばれ、にこりと微笑みかけられると、みのりは慌てて顔の前で両手を振った。
/228ページ

最初のコメントを投稿しよう!

99人が本棚に入れています
本棚に追加