99人が本棚に入れています
本棚に追加
「あの……私、ここにいていいんですか?」
思い切ってそう聞いてみると、周りはそろってきょとんとしている。
亮が肘で突き、「それさっき俺が聞いただろ」と小声で耳打ちしてきた。
思わず「だって」と言いかけた時、玲奈が口を開く。
「お母さんがみのりを追い出すつもりなら、私がお母さんを追い払うわ」
「えっ!」
慌てるみのりを尻目に、玲奈の母も可笑しそうに笑っている。
「あらあら、じゃあ尚更、いてもらわないと困るわねえ」
いつの間にか、随分和んで寛いだ空気が出来上がっていた。
ついさっきまではピリピリと張りつめていなかったか。
何が流れを変えたのかみのりには考えつかなかったが、それでも先ほどまでのような居心地の悪さはない。
玲奈の母親が、中央に置かれた缶に静かに手を伸ばした。
どうやら、話が始まる。
その場の全員が無意識に背筋を伸ばした。
「はじめからこれは玲奈に見せなきゃと思っていたんだけど……どう切り出して良いのか分からなくて。私も中々心の整理が付かなかったし」
言いながら、彼女は缶の蓋を外す。
「いつか……そう思いながら、あんなところに隠したままにして。そのせいで玲奈を余計悩ませて、苦しめてしまったわね」
缶の中身をひとつひとつ確認しながら並べていく。
どうやら古い順に直していっているようだった。
「みのりさん。見つけてくれてありがとうね」
突然呼ばれ、にこりと微笑みかけられると、みのりは慌てて顔の前で両手を振った。
最初のコメントを投稿しよう!