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「もしそうなったら――」 と、彼女の方が言葉を引き継いだ。 「とても、素敵ね……」 望んでいた、互いに。 ここにもし奇跡が起こったら、親も教師も、認めざるを得ないだろうと思った。 この先も一緒にいることが、もしかしたら許されるかもしれない。 どちらの国になるかは分からない。 けれどそこには何の問題もなかった。 もしも全て失っても、それでずっと離れ離れにならずに済むのなら本望だった。 こどもを授かる――それだけが2人に残された小さな希望のように思えた。 その僅かな可能性に縋ることに、躊躇いはない。 幼くて未熟で、けれど真剣で、そしてだからこその素直な思考だった。 愚かだとは思わなかった。 親や友人に気付かれないようにと苦労して手に入れた避妊具は、半分袋が開いただけで用無しになった。 何故こんなものが存在するのか、そっちの方がむしろ不思議に思えた。 愛する人との愛の証明の行為を穢すもののようにすら感じて、男はそれを放り投げた。 「――欲しい」 君が。君の子が。君との未来が。 男が口には出さなかった言葉の先までを、女はしっかりと受け止めて微笑みを返す。 自分も同じだと、その目が語っていた。
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