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ジェシカの留学期間最後の日、彼らが高校1年のクリスマスイブ、終業式。
この日の出来事や想いが交換されることはなかった。
愛している人との未来が、相手とのこどもが欲しいから、用意はあったのに避妊をせずに彼らは身体を重ねた――。
鳥肌が立ったのは、他の誰でもなく、みのり自身が抱いたことのある感情とそれが共鳴したからだ。
何の疑いもなかった。
どんな結果が出ようとも、後悔などしない自信があった。
――何故なら、愛していたから。
その日以降は、そのノートは隆司個人の日記としてしばらく綴られ続けていた。
玲奈の母親が交換日記の次に置いたのは女の子らしい柄物の手帳で、どうやらそちらが帰国した後のジェシカの日記と思われた。
「――この時もし妊娠したんだとしても、その子はもう……40歳くらいだわ」
と、玲奈が呟いた。
「ああ、海にいた子ではないな。……てか、出来なかったんじゃないか? 出来てたら……」
亮は途中で口を噤んだ。
もしもこの時授かっていたとしたら、こんなに想いあっていた2人の願いが通じて希望が叶ったことになる。
ならば全く違う今があるように思われたが、それを口にしてしまうのは、玲奈の家庭を、下手したら存在そのものを否定することと同じだった。
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