第1章

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   ギュッと腕に力を入れると、蒼の呻き声が聞こえた。  絞めすぎたんだろうけど……こんなサプライズ、嬉しい。  本当に、すごく嬉しい。 「蒼……」 「そ、総司……ちょ、ちょっと苦しい……」  困ったと言いたげな声。  でも、離せない。  普段の生活で、決して軽く会える距離に住んではなくて。  会うのが久々となれば、もっと彼女を近くにって思ってしまって。 「しばらく、このままで……」  やっぱり、今日は格好良くなんて出来ない日だ。 「……ぐえっ」  ああ、またしても力が入っちゃったや。  とても愛らしい声が聞こえてきてしまった。 「あのー、沖田くん。廊下だから、慎んでもらえるかな……?」  あー。受付の人、いたんだ。  見えてなかった……。  男の声が聞こえて、僕は漸く蒼を抱き締めるのをやめた。  そして、手を取ってエレベーターに乗り込む。 「すみません、定員オーバーです」  一緒に乗り込もうとした受付の男を空いた手で押し退けて……。 「え……ちょ、総司?」  閉まったドアと僕を交互に見る蒼に、笑って見せる。 「ま、眩しい……」 「ごめん、寒いけど……一緒に出掛けて?」  目を細めて、本当に眩しいかのような顔をしてくれる蒼。  寒い外へまた連れてかなきゃならないなんて……最低だ。  
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