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ギュッと腕に力を入れると、蒼の呻き声が聞こえた。
絞めすぎたんだろうけど……こんなサプライズ、嬉しい。
本当に、すごく嬉しい。
「蒼……」
「そ、総司……ちょ、ちょっと苦しい……」
困ったと言いたげな声。
でも、離せない。
普段の生活で、決して軽く会える距離に住んではなくて。
会うのが久々となれば、もっと彼女を近くにって思ってしまって。
「しばらく、このままで……」
やっぱり、今日は格好良くなんて出来ない日だ。
「……ぐえっ」
ああ、またしても力が入っちゃったや。
とても愛らしい声が聞こえてきてしまった。
「あのー、沖田くん。廊下だから、慎んでもらえるかな……?」
あー。受付の人、いたんだ。
見えてなかった……。
男の声が聞こえて、僕は漸く蒼を抱き締めるのをやめた。
そして、手を取ってエレベーターに乗り込む。
「すみません、定員オーバーです」
一緒に乗り込もうとした受付の男を空いた手で押し退けて……。
「え……ちょ、総司?」
閉まったドアと僕を交互に見る蒼に、笑って見せる。
「ま、眩しい……」
「ごめん、寒いけど……一緒に出掛けて?」
目を細めて、本当に眩しいかのような顔をしてくれる蒼。
寒い外へまた連れてかなきゃならないなんて……最低だ。
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