第1章

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   期末テストを終え、来週はそのテストの返却。そして、大掃除に終業式。  迎えるのは冬休みと……クリスマスと、新年。  ああ、なんか……寂しいなって思っていた金曜の夜。  明日、明後日は何をしよっかなって頭に思い巡らせていた時だった。  電話が、かかってきた。 「もしもし、総司……?」 『あ、こんばんは。蒼……ケホッ……今は電話しても平気?』  掠れた声と、少し遠慮ぎみに吐き出された咳。そして、どことなく弱く聞こえる声色。  総司は、体調が悪いって直ぐに思った。 「大丈夫やで、てか……風邪ひいてるん?」 『え、あ、ちょっと軽めの風邪をひいてて』 「軽めの……風邪? 大丈夫なん?」 『大丈夫! ケホケホッ……大、丈夫です』 「いや、大丈夫そうに聞こえへんけど……? 電話、どうしたん?」  体調が悪い総司から、かかってきた電話。  住んでる場所が離れてることもあって、週に何度か電話はしてるんやけど。こんな体調悪い時にまで電話なんて……。 『大丈夫。心配ありがとう。電話は、たいした用ではなくて。 あの……クリスマスは……何か予定があるかなって』 「……クリスマス」  クリスマスと聞いて、私の顔が歪む。  変態晋作に、クリスマスは空けろとしつこく言われてるんよなぁ。  “ 蒼たんと結ばれる素敵な日にするから、クリスマスは絶対に空けろ! 間違っても他の男との予定なんか入れんじゃねぇよ! ”  “ 誰が結ばれるねん! こっちにも選ぶ権利があるんやから!”  “ 俺を選ぶ権利しかねぇ!”  “ それ権利ちゃうやろっ!? むしろ、拒否やから! そんな権利は放棄するわっ!”  学校で、ずーっと晋作にしつこく言われてるんやけど……わざわざクリスマスに会うんが晋作ってのがイヤで。  だって、晋作は……、  “ 蒼たん、そんな照れなくても良いって。本当は、俺と愛を育みたいんだろ? ”  変態で……。  しかも、私のことを好きなんて言うから……。  恋愛における好きってのが分からん私には、応えられへんからこそクリスマスは一緒におりたくないねんよな。    クリスマスって、キリストの誕生祝いやのに……恋人の日みたいなイメージやもん。  応えられへん私には、晋作とクリスマスに遊ぶことが躊躇われる。  
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