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「予定なんか、ないで」
昔から、親が家にいなかったこともあって。
クリスマスに特別なものを感じたことはない。
ましてや、恋人とかよりも、サンタクロースにも来てもらったことないし。
温度差のようなもの感じるから、余計にクリスマスってのを考えへんくなって。
ただ、今年は……珍しく仲良くなった彼らがおるから。
ちょっと、楽しみやったんやけどなぁ。
晋作からの誘いも、晋作が私のことを好きじゃなかったら……遊んでも良いのに。むしろ、遊びに出掛けたかったのに。
『ケホッ……ケホッ』
「総司? ほんまに大丈夫?」
耳に入った咳が、頭を巡る思考を止めた。
軽い風邪って言うけど、咳が頻発してるやん。
『あはは……大丈夫。クリスマスが空いてるなら、会いに行きたいな……って思ってて。
今年、きっと会いに行けるのはその日くらいしかないから』
「会いに……クリスマス……」
『年末年始は、なかなか予定の融通も利かなくて。
ケホ……日が日だから、嫌なら行かないよ』
来週に控えるクリスマス。
終業式の日がイブで、冬休みの初日がクリスマス。
カレンダーを見て、なんでクリスマスなんやろって心で呟いた。
総司だって……私のこと好きって言うてくれてて。
そんな総司とクリスマスに会うんって、どうなんやろ?
離れてる分、年内に会えたら良いなとは思うんやけど。
むしろ、会って……剣術についても話したりしたいんやけど。
『迷惑……?』
「え……いや、ちゃうねん。そうじゃなくて……」
『ケホ……ゴホッ……』
また、咳や。
「総司、そんな体調やのに……こっちに来るんしんどいやろ?」
『いえ、治しますから。お構い無く』
「お構い無くって……」
語調を強めた総司には、ほんの少しピリッとした緊張感を感じた……んは、気のせい?
「でも、さっきから咳がよう出てるやん」
『……出てません。あ、ごめん。また後で電話かけていい?』
「……うん。ええんやけど、あんま無理せんとね?
しんどかったら、寝るんやで?」
『必ずかけるんで』
「……わかった」
電話の終わりは、そんな感じやった。
必ずかけるって総司は言うてて、私は夜中くらいまで待ってたんやけど。
結局、かかってくることは無かった。
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