第1章

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  「予定なんか、ないで」  昔から、親が家にいなかったこともあって。  クリスマスに特別なものを感じたことはない。  ましてや、恋人とかよりも、サンタクロースにも来てもらったことないし。  温度差のようなもの感じるから、余計にクリスマスってのを考えへんくなって。  ただ、今年は……珍しく仲良くなった彼らがおるから。  ちょっと、楽しみやったんやけどなぁ。  晋作からの誘いも、晋作が私のことを好きじゃなかったら……遊んでも良いのに。むしろ、遊びに出掛けたかったのに。 『ケホッ……ケホッ』 「総司? ほんまに大丈夫?」  耳に入った咳が、頭を巡る思考を止めた。  軽い風邪って言うけど、咳が頻発してるやん。 『あはは……大丈夫。クリスマスが空いてるなら、会いに行きたいな……って思ってて。 今年、きっと会いに行けるのはその日くらいしかないから』 「会いに……クリスマス……」 『年末年始は、なかなか予定の融通も利かなくて。 ケホ……日が日だから、嫌なら行かないよ』  来週に控えるクリスマス。  終業式の日がイブで、冬休みの初日がクリスマス。  カレンダーを見て、なんでクリスマスなんやろって心で呟いた。  総司だって……私のこと好きって言うてくれてて。  そんな総司とクリスマスに会うんって、どうなんやろ?  離れてる分、年内に会えたら良いなとは思うんやけど。  むしろ、会って……剣術についても話したりしたいんやけど。 『迷惑……?』 「え……いや、ちゃうねん。そうじゃなくて……」 『ケホ……ゴホッ……』  また、咳や。 「総司、そんな体調やのに……こっちに来るんしんどいやろ?」 『いえ、治しますから。お構い無く』 「お構い無くって……」  語調を強めた総司には、ほんの少しピリッとした緊張感を感じた……んは、気のせい? 「でも、さっきから咳がよう出てるやん」 『……出てません。あ、ごめん。また後で電話かけていい?』 「……うん。ええんやけど、あんま無理せんとね? しんどかったら、寝るんやで?」 『必ずかけるんで』 「……わかった」  電話の終わりは、そんな感じやった。  必ずかけるって総司は言うてて、私は夜中くらいまで待ってたんやけど。  結局、かかってくることは無かった。  
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