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「ケホッ……ゴホッ……あー」
止まらない咳。しかも、熱まで上がって鼻水まで。
風邪にしたって、ここまでひどいのは……。
「土方さ~ん、まだですか~?」
高校の寮は、各部屋に小さなキッチンがある。
まあ、食堂を使うことの方が多いから、滅多に料理なんてしない……。
でも今は、そこに土方さんが立っていて、甲斐甲斐しく看病をしてくれてるわけだ。
それにしたって、不細工な絵面というか……前世の新撰組の副長と同じ顔をしていながら、キッチンで料理をしてる姿が気持ち悪いなぁ。
威厳もなく、唸りながら手を動かして。
炊飯器でお粥が作れるって言ってるのに、栄養価の高いものを食べなきゃ駄目だと本人の無駄なヤル気が、既に二時間も続いてる。
時々、焦げた匂いがするし、不安で仕方ない。
「……不味い」
味見をしたらしい土方さんの声が微かに聞こえた。
いつまで待たせる気なんだろ?
だいたい、食欲なんてないからお粥にしてくれって言ったのに……。
「ゲホッ……ケホケホッ。あー、もう。土方さん、変わりますよ」
数日看病するために買い込んだらしい沢山の食材があれよあれよと減ってく様は、なんだか見てて痛い。
ベッドから起き上がって、キッチンへと行こうとしたら……、
「テメェは寝てろ。大人しくしとかねぇと治るのが遅くなんぞ」
不機嫌な声が足を止めさせる。
「そうは言いますけどね、さっきから臭いんですよ。焦げの匂いが部屋に染み付いたらどうしてくれるんですか……?」
「こ、焦げてなんかねぇよっ。いいからお前は寝てろって」
こらだけ待たせて、更には分かりやすいほどの臭いがしてるっていうのに……なにが焦げてなんかねぇ、なんだろ。
まったく、意地っ張りだ。昔から。
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