第1章

7/19
前へ
/21ページ
次へ
   土方さんの意地っ張りが、キッチンから退きそうにないし……携帯を拾って手にしてみたけど。  電話、しなきゃな。って思いながらも出来ない。  玉砕覚悟でクリスマスを誘ってみれば、口ごもられて。  風邪をひいてるのも、バレバレで。  心配させるだけだって分かってたけど、心配されたかったのもあったり。  そんな気持ちでかけた電話を切ったのは、タイミングも読めない意地っ張りな土方さんのせいだ。  クリスマス。誘って断られたら笑われそうだし、切ってしまった。  後でかけようって思ってたのに、ここに居座ってくれちゃって……まだかけれてない。  さすがに、昼も近くなってきたから連絡の一本くらいしなきゃと思うのに……情けないほど出来ない理由を並べちゃってみっともないよね……。  風邪と共に、弱気の虫が体に入ってるのかな……? 「まーた、電話とにらめっこかよ」 「料理に集中してください」  顔を覗かせた土方さんは、一つも完成しない料理を作る気があるんだろうか? 「しゅ、集中してるっつーの」  投げやりに返された言葉に、ハァとため息を送りつけてやれば、土方さんが忙しなく動き出したのが音でわかった。  ほんと……出来ないくせに何を頑張ろうとしてるんだか。  なんて、思った時だった。 ーーーーピンポーン  不意に部屋の呼び出し音が鳴る。  部屋の呼び出し音というのは、寮の受付の内線電話の機能を果たしていて。つまり、来客を受付が知らせてくれるというもの。 「誰か来たみたいですよ~、土方さん」 「誰だよ、邪魔くせぇな……はいはい、出ますよ」  土方さんの部屋じゃないのに、気を使ってか面倒そうにしながらも土方さんが受話器をとる。  土曜の昼の来客……か。  来るとすれば、久坂とか入江なもんだけど……たいてい土方さんを訪ねることの多い二人が来るなんて……珍しい。 「はい、沖田の部屋です……来客なら帰してください」 「ありゃりゃ、勝手に帰しちゃうんだ」  まあ、良いけど。  誰かと遊ぶ元気もないしなぁ。 「えっ……は? え、ええ!?」 「…………?」  あれ?  なんだろ、受話器を持ったままの土方さんの顔が固まってる……?  
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加