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ガチャン、と勢い良く受話器を置いた土方さん。
「総司……」
「どうしたんです? 誰が来てたんですか?」
問いかけると、眉を寄せた土方さんがギュンっと音が出そうなほどに素早くこっちを見て、
「部屋を片付けろ!!」
何故か焦りながらそう言う。
「えー? そこまで汚なくないです。というよりもですね、誰が来たのかくらい言ってくれますか?」
変なの。なんで土方さんが焦ってるんだろう。
焦るような誰かが来てるってことなのかな?
「いいから! 一ノ瀬が来てるんだよ! このまんまの部屋で通す気か!」
「へ……? すみません、今……なんて言いました?」
「だから! 一ノ瀬 蒼が来てるっつってんだよ!」
「…………」
一ノ瀬……蒼……?
頭で繰り返された名前に、途端に血の気が引いた。
いや、まさか……そんな……そんな……会いに来てくれてる?
「固まってる場合じゃねぇんだよ!
ほら、部屋を片付けろって!」
「あ、ああ……そうですね。そう……ですけど、ちょっと待って下さい! 男子寮に女子は入れないんじゃ……」
来てくれてるのは嬉しい。だけど、ここは男子寮なわけで。
女子は入れない規則だ。
部屋を片付ける意味ってあるのかな……?
「受付が通すっつってんだから、来るんだよ!」
「ええっ!? ちょ、わ、え、こんな焦げ臭いのに!?」
受付が女子を通すなんて……。
いや、それよも部屋!
というか臭いが!
どうしよう、ボーッとしてる場合じゃなかった。
あ、あ! そうだ!
「土方さん! ちょっと蒼と出掛けてくるんで、その間に片付けてくださいっ」
そう言って、サッと脱ぎ捨てた部屋着。
寒っ! なんて思ってる暇なく着替えて。ちゃっかり厚着はしたけど、素晴らしい早さで着替えれたと思う。
「……長めでよろしく、総司」
キッチンの横を通りすぎると、ダークなものが沢山見えてしまった。
それなりに、土方さんも申し訳なく思ってくれてるのかな?
このダークな物質と臭い。
「行ってきます!」
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