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「俺はね、今、すごく毎日が楽しいよ。家族以外の他人から、こうやって愛情をもらえる日がくるなんて、考えてもみなかったから。もう、自分を否定したりはしない。強くなる。これからは、強くなるよ。だからね、もう、心配しないで」
普通じゃない、おかしいって、ずっと自分のことをそう思ってた。
どうして俺は幸せになれないのかって、何度もそんなことを考えた。
だけど、今は違う。
俺のことを大切にしてくれる人が、家族以外にもたくさんできたんだから。
橘くんや高岡、それから菜穂ちゃんたちに出会えたことは、これから先の人生の中でもきっと一番大きな出会いだと、そう思える。
俺が俺だったから。
男しか好きになれない真宮柚子だったから。
だからこうして巡り会うことが出来たんだと、今なら少しだけこんなふうに肯定的にさえ考えられるようにもなった。
そう思わせてくれた、みんなに心から感謝したい。
つらい時、こんな俺を責めることもせずに、支えて守ってくれた父さんと母さんにも。
「ありがとうね、」
「…っ、」
「俺は、大丈夫だよ。だから、心配しないで。……もう、大丈夫だから」
「良かった、ね。柚子…、良かった、」
「……うん、」
相変わらず涙は止まらない。
それを誤魔化すようにして、肉じゃがに手を伸ばし、大きなじゃがいもを口いっぱいに頬ばった。
母さんの優しさが詰まった味。
あふれ出る涙を無視して、どんどん口に詰め込む。
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