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「そんなに慌てて食べちゃ、喉に、詰まっちゃうよ」
「だっておいしいから」
柚子は昔から好きだったものねって、泣きながら母さんが笑った。
父さんはコップに注いでいたビールを飲み干すと、母さんに色々言われながらも新しいビールを取りに行った。
「柚子がいると、お酒も進むな」
「ただ飲みたいだけのくせに。父さん、俺を使わないでよ」
「使ってないぞ。事実だからな」
「いいですよ。飲みたいのなら飲めば。明日全然飲まなければいいだけのことですから」
「いや、それは、」
父さんが、母さんにぺこぺこと頭を下げる。
だいたい毎日飲む必要がどこにあるのって、母さんが怒ったようにそんなことを言う。
何だかんだでうちは母さんが強い。
「父さん、じゃあ明日は休肝日だね」
「柚子はお父さんみたいに飲み助になっちゃダメよ」
「え…、」
父さんと母さんが笑ってる。
俺の顔色を伺いながらの、気を遣った笑顔じゃなくて。
今まで本当に心配ばかりかけたね。
俺が感じた苦しみと同じくらいの苦しみも味わわせてしまった。
それでも、ずっと味方でいてくれてありがとう。
父さんと母さんにも否定されていたら、俺はきっと今ここにはいないはずだもの。
父さんと母さんの子で良かったと、心からそう思うよ。
守ってくれて、愛してくれてありがとうね。
二人とも、大好き。
目頭が熱くなる。
俺はぐっと目に力を入れ、もう涙がこぼれないようにって、また母さんのご飯を口いっぱいに詰め込んだ。
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