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ちょっと。
ほんのちょっとだけ。
見直しそうになる。
けど。
「それに、美島さんの作品に対する愛情が、この椅子から滲み出ているからな」
ーーーーーーーーー。
一気に胸糞が、悪くなった。
愛情なんて言葉。
あんたが使うんじゃねーよ、なんて。
「美島さんは最高の職人です。あの人と組めて俺は最高の幸せ者だ。
あの人と一緒に頑張って来て、本当に良かったと思っています」
俺の言葉に、須藤さんの目が微かに見開かれる。
驚き?
不快感?
どっちだっていい。
「俺は、自分のやり方が間違っているとは思いません。昔も、今も。
展示会を開けたのが、何よりの証拠です」
言ってやった、という思いと。
言っちまった、という思い。
熱が微妙に引くと、言っちまったに考えが傾くのは、致し方ない。
やべぇ。
俺、何言っちゃってんの!?
ピクリと微笑むこともなく、真っ直ぐに見て来る須藤さんの視線に耐えきれず、俺は慌ててその場から腰を上げる。
「っお、俺、もう仕事に戻ります。失礼します!」
ガバッと頭を下げると、俺は急ぎ足でその場から離れた。
早川健斗、二十七歳。
とうとう、やらかしてしまいました。
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