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「早川さん、四番にお電話で~~す」
事務員である鈴木さんの変に間延びした声も、今ではもう聞き慣れている。
「了解で~~す」
同じようなリズムで返してやると、決まって彼女は嬉しそうにニヤリと笑った。
それぞれが仕事に取り組む音でざわめく部屋の中、
それすら心地良いBGMに聞こえてしまう俺は、ただいまかなり浮かれている。
「もしもし、お電話変わりました。早川です」
気持ちを切り替えて歯切れよく受話器に語りかけると、
少し遠くから俺の大好きな人の声が響いて来る。
『あ、早川さん?美島です』
美島藤次郎。
俺が担当している家具職人の一人だ。
「はい、お疲れ様です!」
『クスクス、早川君今日も元気ですねぇ』
嬉しそうな声色が耳に届き、美島さんの笑顔が自然と浮かんで来る。
「俺はいつでも元気ですよ!今日は打ち合わせの件についてですか?」
『ええ、そうなんです。改めて日取りの確認と、次に早川君が来られる日をお聞きしようと思いまして。
その時にまた作品を見ていただけますか?』
「勿論です!明日にはお伺いしますので、よろしくお願いします」
相手には見えていなくても、俺は深々と頭を下げた。
そんな俺の姿を、前のデスクに座っている同期の児玉が楽しそうに笑みをこぼしながら見ている。
「打ち合わせの日取りはですね…………」
展示会。
それは、入社してから今まで、ずっと夢にまで見ていた快挙だった。
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