11人が本棚に入れています
本棚に追加
「いいね~もう少し二人くっつけるかな」
「はーい、こんくらい?」
「うんうん、俊也くんちょっと前めで」
今日は、最近若手俳優で組んだアイドルユニットでの雑誌撮影。
元々役者志望だったからアイドルってのは抵抗があるけど、なかなかに人気があったりするから背に腹はかえられない。
同い年の人間の中で一番有名になるのが俺の夢だから。
「いいね~、視線こっちくださーい」
このユニットが結成されてから早半年。
出した歌は当初の予定通り、5ヶ月連続発売のシングルと6ヶ月目の今月にアルバムが1つ。
人気の若手俳優が集まっているだけに、レコード会社も相当力を入れてくれているらしい。
プロモーションもかなり豪華で、出したシングルとカップリング曲の半数はCMとのタイアップだ。
そして残りの曲はドラマの主題歌。
まあ、主題歌って言ってもそのドラマの主演はこのユニットのうちの誰かだから歩相応ってところか。
でもまあ、売り上げもかなり上々だし、注目も集めてる。
仕事もプライベートも順風満帆。
リア充って俺みたいなやつのことを言うんだな!…なんて。
自分ではそう思ってるんだけど、どうやら端から見ると俺のプライベート、主に恋愛関係はあまりよく評価されない。
年相応じゃない、とよく言われる。
「…つかむしろ、年相応ってなんだ?」
10代のくせにただれてるって言われた。
そのあと、あのおっさんはお前には10代の爽やかさがないと言って、ヘラヘラ笑って…。
「爽やかさ…俺十分爽やかじゃね?」
「おい、俊也、さっきからごちゃごちゃうるせぇぞ。キモいから独り言やめろ」
「だって、咲真のやつが変なこと言うから」
気になっちゃってんだよ。
パシャリと光るストロボの中、スラッと背の高い今人気の俳優、坂上航也と背中を合わせてカメラに視線を移す。
かぶっていた帽子を口元に持っていき目を伏せれば、カメラマンはお決まりの褒めゼリフを吐きながら興奮したようにシャッターを切った。
最初のコメントを投稿しよう!