19歳の苦悩

日数より多いってどういうことだよ。

伏し目がちにしているフリをして航也を横目で見ていたら、むこうもこっちを見てきて視線がぶつかる。
こいつの場合は咲真と違ってあきれる風でもなく、ただ淡々と思ったことを述べてるって感じだから別に腹が立つってこともなく、言われるがままとりあえず聞いてるけど。

「別にオフだったら昼買いもん行って、夜はメシ食いに行ったりとかするじゃん、普通に」
「男と行けよ」
「行ってるし、その時だって男ともメシ食いに行ったよ」

別に、何もなかったし。

普通に誘われたから買い物行って、メシ行って、クラブ行ってちょっと遊んだだけじゃん。

「結局より戻すなら最初から別れるとか言うなよ」
「だって腹立つじゃん」
「何回目だよ、しょうもない痴話喧嘩」
「俺は毎回、ほ・ん・き、なの！」

ムキになって声をあげれば、航也とカメラマンは苦笑い。メイクさんが髪を直しに来てうまく場を繋いでフォローしてくれたけど、マネージャーは奥で怖い顔。
その隣で俺を悩ませている本人は涼しい顔で笑っている。

（咲真だって遊んでるくせに…）

ユニットでの活動はそれぞれが多忙なこともあって、全員集まる時とペアで分けての撮影の時がある。
俺は名前に同じ「也」がついてるからってことで歳は離れてるけど航也とペアになることが多い。
年下の俺が言うのはなんだけど、航也は口は悪いが信用できる男だ。
ウワサなどには流されず、きちんと自分を持っている印象。
俺のことも偏った目で見ずにちゃんと話を聞いてくれる。