第1章

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「えー、冗談言わないでくだせいよ。ワレがコイツに通訳をしろと? 何となく気が引けるんでやすが…」 ……… 「いやそりゃサキ様の言うことには従いやすよ? 従いやすけど、個人的にはちょっと複雑…」 ……… 「……!ああ、そうでやしたね。 わかりやしたよ、やりますやります、やらせてもらいやすよーだ」 どうやらサキと、自称マロと言うリスはテレパシーかなにかで会話したのだろう。 通訳ねぇ…。 たしかに喋れない上に筆談できないとなると意思の疎通は難しいが 冬馬は少しサキが分からなくなった。 冬馬はてっきりサキに拒絶されるか距離を置かれるものだと思っていたが この様子を見ても、自分の姿と状況に驚いていた様子はあっても 冬馬をどうこう思っている様子は窺えない。 それどころか冬馬の前で力を使ってまで冬馬と会話したいと考えている。 自分は今、どんな顔をしているだろうか。 俺はサキのことは好きだし、サキに嫌ってほしくない。 だからさっきはその気持ちが、恋愛感情かどうかを抜きにして素直に嬉しかった。 だが、後からよく考えてみると、サキはなぜこのタイミングで気持ちを伝えたのだろうか。
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