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分からない。
「あのォ、冬馬サン? 聞いてらっしゃいます?」
不意にマロに声をかけられ、冬馬はハジけたように顔を上げた。
「あぁ、ゴメン。聞いてなかった。えっと、何かな?」
「やっぱ聞いてなかった…。
だからですね、サキ様はどうやら一時的なショックで声が出せないようでやす」
「あぁ、たしかそんなことを父さんが言ってたよ」
「そう、それでですね、代わりにワレがサキ様と冬馬サンとの通訳をつとめようというワケでやす!」
「あぁ、なんかそうみたいだね」
「で、これはワレにはよく分からないでやすが、
サキ様はまず冬馬サンにお礼とゴメンなさいと伝えてほしい、と。
それから不思議と今は気持ちは楽だから安心してほしい、と。」
「そうか」
「はい、今のところ以上でやす」
「…聞かないんだね」
「へ? 何がですかい?」
「俺とサキの間にあったことだよ」
すると、マロはしばし黙り込んだ。
「……その権利はワレにはありやせんし、ワレはサキ様を信頼してます故」
「そうか。……いいコンビなんだね」
「とんでもない。そんなワレのことよりサキ様に何かお伝えくだされ。
少し不安に思ってらっしゃる」
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