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「……ン…」
サキは細く目をあけた。だがすぐに入り込んできた光に思わず目を閉じる。
もう一度、同じくらい目をあけると、記憶の中に焼きついている姿がーー頭が傍にあるのが見えた。
記憶と違うのは、その姿がこれまでに見たことがないほどに悲しみを纏っていることだ。
そして、また記憶と同じように
「…と、うま…?」
その光沢のある髪に問いかける。
悲しみを纏った彼は、ガバリと顔をあげ、サキに抱きついた。
あぁ、知ってる。
わたし、知ってる。このぬくもり。この匂い。この…涙。
「冬馬…」
そう言って、自分も抱きしめ返そうと腕を持ち上げた瞬間、ビリッとした痛みが走った。
「イタッ…!」
見ると、両方のちょうど手首の少し上のあたりに包帯が巻かれていた。
なぜこんなところに包帯?
あれ、そういえばわたし…。
あ、そうだった。
わたし確か、あれから息が出来なくなって…どうだったっけ?
そこから先は記憶が真っ白だった。
頑張って頭の中を探るけれど、やはり記憶のページは白いまま。
サキがぼんやりしていると、抱きついていた冬馬がようやくその体を離した。
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