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「サキ、大丈夫? 俺のこと、平気?」
「………」
あれ? わたし、声が…
口をパクパクさせるが、掠れたような音しかでない。
怖くなって、喉に力を入れた途端、咳が出た。
「ケホケホケホッ…」
「だ、大丈夫?」
冬馬はそう言ったが前のように抱きすくめることはなかった。
それどころか、サキから手を離し不自然な動きで椅子に座りなおした。
その行動にサキはショックで堪らなくて、腕に力を入れようとするが、
それは数センチ持ち上がっただけであっけなく元の場所に落ちた。
グニャリと視界が歪む。
怖い。怖い。怖い、怖い!
なんで抱きしめてくれないの?
なんでわたしから離れていくの?
その時、頭の中である情景が走馬灯のように鮮明に浮かび上がった。
そうだ、わたし…。
わたし、冬馬にまで嫌われたんだ…。
冬馬が悪いんじゃない。
全部、全部、悪いんだ。
そう思った次の瞬間、堪えていた涙が一粒、また一粒と頬の上を流れていった。
わたし、泣いて…。
ゆっくりと冬馬の方を縋るように見ると、
冬馬は俯いていてこちらの様子に気づいていないようだった。
サキは思うように動かない腕を指を動かしてようやく冬馬に手を差しのべた。
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