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魔法が発展した異世界(マグナ)
一層濃くなっていく闇夜の中、既に異変は起きていた。
森の奥深くの村が業火の渦に包まれている。燃え盛る真っ赤な炎の前で、1人の少女が絶望のふちに立たされていた。
その少女は青みがかった銀色の美しい髪に、珍しい青紫色(ヴァイオレット)の瞳をしている。その陶器のような白い肌は今、炎の前により僅かに赤く染まっていた。
その美しい瞳から、一滴の涙がこぼれ落ちる。
「......どうして」
少女は息を吐くように小さく呟いた。涙が溢れ、視界がぼやけていく。
少女の村は何者かによって襲われた。目的はこの少女自身だ。捕らわれそうになった少女は身を挺して守ってくれた両親を失い、村を失ってしまった。
その深い悲しみから少女は、この炎の海を生み出す。少女による強力な魔法によって、突如襲ってきた黒ずくめ者達を魔法で全滅させた。
「いや...どうして私が...っ!」
深い悲しみの中から生み出された自身の強力な力に、震えが止まらなかった。少女は肩を抱き、崩れ落ちるように膝をつく。少女の表情は凍りつき、恐怖に己が呑み込まれそうだった。
少女は異質の存在だったのか。確かに村では、少女の魔力は明らかに突出していた。
それが何故こうして狙われることになってしまったのか、少女にはわからない。
少女は全ての力を使い果たした。恐怖の狭間で次第に薄れゆく意識の中、必死に自身の叫びを誰かに伝えようともがく。
(誰でもいいから。誰か……誰か、私を助けて……!)
やがて少女は全身の力を無くしたように、地面に倒れ込んだ。
刹那、倒れ込んだ少女の前に、闇と同化した人影が現れる。
新たな敵だろうか。その人影が少女を抱きかかえると、燃え上がる炎を背に消えてしまった村を後にする。
日々の中で争いが行われるマグナでは何の偏屈もない出来事に思われたが、この村の襲撃はこの少女を巻き込み、後に繋ぐ長い戦いを知らせる予兆にしか過ぎない
それは、闇夜が薄くなる夜明け前の出来事であった。
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