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時空間の狭間で、その一部始終を時の水晶で眺めていた男がいた。ここは、時の間。または、境界の間と呼ばれている。
その男は誰もが息を呑むような美貌を兼ね備えていた。白髪に縁なしの眼鏡をかけている。
名はユーリウス・クロノス。彼は、この境界の番人だ。
代々の時空の司る神であるクロノス一族(天界の一族)が、時の水晶と呼ばれる2つの世界を見通すことの出来る美しい水晶を持ってして神の力を使い、境界の番人として2つの世界のバランスを調整していた。
ユーリウスが拠点を構える時の間の書斎のような空間には、本棚にいくつも古書が並べられてある。
この時の間では、代々の境界の番人が2つの世界を見守り、それを記録として著書という形で世界の歴史と二つの世界の発展を綴ってきたものだ。
その量も膨大であり、ユーリウスの元に訪れた”ある来客”も本屋であると勘違いしてしまう程であった。
普通ならばこの時の間には、2つの世界の人間が迷うことはない。ユーリウスはたった今、マグナという世界に送った少年を思い返す。
その少年は、明らかにアースの少年だった。マグナという世界とは違い、魔法などは存在しない科学技術が発達した世界。
「さて、これからどうなるんでしょうね」
表情には出していなかったユーリウスだが、内心かなり驚いていた。まさか、人間がこの時の間に迷い込んでくるとは思わなかったのだ。
この時の間に訪れるのは、境界の番人であるユーリウス・クロノスと同じ神と呼ばれる者達。ユーリウスの故郷である天界に住まう者に限られる。
初めは、なんの抵抗もなしに入ってきた少年を人間だとは認識していなかった。
少年の生態系をユーリウスの力で分析した結果、アースの人間であることが初めてわかったのだ。
だが、人間が入り込んでしまうのは過去に例などない。
時の間の次元空間が、なんらかの理由でアースの世界に接触してしまったのだと考えた。その原因が時の水晶の中にいたあの少女にある。
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