序章 夜明け前

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 ユーリウスは時の水晶の異変に気付いた。顔を近づけると、水晶内に暗雲のような靄が渦を巻いている。 「これは、大変な事になりましたね.....まさか私の代で」  “2つの世界のバランスが崩れかけようとしている ”  2つの世界のバランスが崩れかけているということは、境界の番人であるユーリウスにとって一大事だ。 「.....おや、もう辿り着きましたか」  時の水晶に、少年の姿が映し出された。無事にマグナの世界に送り届けられたらしい。その周りの情景を眺め、ユーリウスは首を傾げる。 「私としたことが、力の加減を間違えましたか.....」  どうやら彼の送る先を間違えてしまったらしい。神の力を持つユーリウスは、久しぶりに使った力を制御しきれなかったようだ。   ユーリウスは、神の力を使う機会はほとんどと言っていい程なかった。2つの世界のバランスを調整しているが、滅多なことがない限り世界のバランスが崩れることはない。  しかし、2つの世界のバランスが崩れてしまう要因は、自然が朽ち果ててしまう天災によるものか。戦争によって滅ぼされる人災によって分けられる。今回は後者によるものだろう。  天災であれば、ユーリウスはなんとか出来る──しかし、人災によるものが原因であるのなら、神(天界の者)は手だしが出来ない。人の心まで動かすことが出来ないからだ。  ユーリウスは、水晶中ににうつる少年の姿をしばらくの間、託すように眺め続けていた。   「マグナの世界は波乱に満ちています。どうか、少女を見つけ出して光の道へと導いてください」  ユーリウスは、その少年の行く先を時の加護に願う。  “少年は、世界を救う救世主になりうるかもしれない”と───        ◇
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