第1章

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“ごめんww寝てたwww” “遊ぶのはまた、今度にしない?” LINEの背景は、 ツインテールをして、 ぺろりと舌を出した君の写真。 君は、猫みたいな顔をした華美な女で、元カノだ。 これはもう六回目のドタキャンだった。 とても可愛らしい君の顔を覆って、 それと相反する憎たらしいLINEが送られてきたのはたった今のことだ。 もう一人の自分に聞かせるかのように、 演技がかっている程大きな溜め息をつく。 期待するからこうなるんだよ、 と自分に言い聞かせるみたいに。 ああ。 一人暮らしの混然とした部屋に、 憂鬱な空気が広がっていくのを、 俺は観客みたいに見つめていた。 “いいよ、また今度ね” 寛大な男の振り、 気にしてない振り、 そんなものはもう疲れたのに、 俺はまた本心をぼかやした言葉を繋げる。 繋ぎ止められている気も全くしない、君の心を繋げるために。 すぐに、携帯が手の中で震える。 “ごめんね~~会いたかったよ” は? 俺はそろそろ返信する気を失って、 携帯を机の上に投げ出し、 ベッドに倒れ込んだ。 六回目のそれに未だに揺らされる自分も腹立たしくて、 ベッドの片隅に落ちていた漫画を壁に向かって放り投げた。 ぱしんと音を立てて壁に当たったそれは、 力なく落ちていって視界から消えた。
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