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「圭介はさ、優しいよ」
と、君が言う声が聞こえる。
あたたかくて、いい匂いがする。
目を積むって横になっている俺の肩に、
心地よい重さと体温が感じられる。
ああ、君がいるんだ、と思う。
「俺、優しいかな」
「圭介の優しいとこと賢いところが好きだよ」
と、オルゴールみたいな君の声が鼓膜を柔らかく揺らす。
「ねえ、ねえ、圭介」
と言いながら、
君は、眠気で頭がぼんやりしている俺の脇腹をくすぐっている。
君がケラケラとやんちゃな笑い声を立てている。
「あ、もう、やめてってば」
コロコロと笑って目を開けると、すぐそばに君の顔があった。
君はくすぐる手を止めて、
俺に向かって子どものような顔で笑い掛けた。
その顔を俺のごつごつとした手で包んで、
ぐっと近くで覗きこむ。
君がすうっと真顔になって、
もはや顔全体が捉えられないほど近くになった瞳の中に、
俺が写っているのが見えた。
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