第1章

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「圭介はさ、優しいよ」 と、君が言う声が聞こえる。 あたたかくて、いい匂いがする。 目を積むって横になっている俺の肩に、 心地よい重さと体温が感じられる。 ああ、君がいるんだ、と思う。 「俺、優しいかな」 「圭介の優しいとこと賢いところが好きだよ」 と、オルゴールみたいな君の声が鼓膜を柔らかく揺らす。 「ねえ、ねえ、圭介」 と言いながら、 君は、眠気で頭がぼんやりしている俺の脇腹をくすぐっている。 君がケラケラとやんちゃな笑い声を立てている。 「あ、もう、やめてってば」 コロコロと笑って目を開けると、すぐそばに君の顔があった。 君はくすぐる手を止めて、 俺に向かって子どものような顔で笑い掛けた。 その顔を俺のごつごつとした手で包んで、 ぐっと近くで覗きこむ。 君がすうっと真顔になって、 もはや顔全体が捉えられないほど近くになった瞳の中に、 俺が写っているのが見えた。
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