第1章

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その時、携帯のバイブが鳴って、 俺はぱっと目を開けた。 布団もかけず、いつの間にか眠ってしまっていたらしい。 そこは当たり前に君がいない一人暮らしの部屋で、 自分が夢を見ていたんだということに気付く。 肌寒くて、くしゅん、とくしゃみが一つ出た。 “今頃、元カノさんと会ってるの?楽しいですかwww” 今日元カノと会うことを話していた、 昼にゼミに会ったばかりの女友達だった。 黒髪を一つにしばり、白いニットにデニムを合わせていた、 女友達のにやっと笑った顔が思い浮かぶ。 女友達は、元カノとは幾分違って、カジュアルで媚びた感じのない女だ。 このタイミングにナイスというか、なんというか。 俺は自嘲的な笑みを浮かべ、ベッドに寝そべりながらながら返信を打つ。 “ところが、なんだなー。六回目のドタキャンきたこれwww” “うそ、元カノひどいwww” “しかも、俺、怒れないタイプwww” “それだよ!そんなことしてるからナメられるの!相手も相手だけど!” “ですよねーww 選ぶタイプが悪いのかと思ってたけど、 最近は、俺が女の子の悪い面を引き出してるんじゃないかと思うwww” “馬鹿!圭介は馬鹿!” “でも、くっそ好みなんだよなあ。でも、可愛いだけなのかなー” “圭介は地雷を踏み続けろ!” 俺はくくっと笑って、 “もう踏み続けてるよw”と送信した。 そこで返信が来なくなって、 あれ、と思ったけれど、あまり気にならなかった。 携帯を投げ出し、 片腕を天井にかかげて、それを見つめる。 誰にも必要とされていない手だ。 そう思って、腕をそっと下ろした。 「圭介はさ、優しいよ」 夢の中で聞いた君の声が蘇る。 俺は優しいんじゃなくて、嫌われるのが怖いだけだ。 それなら要らない、と言われてしまうのが怖いだけだ。 でも、 引きがつかなくなってるだけな気もするんだけどな、 なんて考えて、頭をグシャグシャとかいた。 「あー、サイコパスになりてえ……」 その一人言を聞いていたかのようなタイミングで携帯のバイブが鳴った。 君からだった。 “ごめんね~~また来週にでも会おう☆” 俺はそれに、ううん、と言えないダメなやつなんだよ。 【end】
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