クリスマスの始まりは教室で

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 「移動しようか」  「うん」  ようやく落ち着いたわたしの前に、遼の手が差し出される。  少しだけためらってから、やっぱり気恥ずかしくてはにかんだわたしは、ようやく遼の手のひらに重ねた。  「志穂の手、冷たいね」  「あっ、……ごめん」  思わずぱっと手を振りほどくと、遼は慌ててわたしの手を捕まえる。    「違う違う、責めてるんじゃなくて。  志穂、手袋は忘れたの?」  「……うん」  出発予定時間ギリギリまで準備してて、途中で気付いたけど、遅れちゃいそうでそのまま出てきた。  今考えると迂闊だったなぁ。  しもやけでヒリヒリして痛い。  同じように手袋をしていない遼の手はあったかかった。  「そうか、てっきり俺の話を覚えていてくれたのかと思った」  「え、話……?」  何のことかと問うわたしに、遼は「何でもない」と言ってはぐらかしてから、冷たいわたしの指にぐぐっと指を絡めた。  「あ……!」  「この繋ぎ方なら、志穂の手をもっと温めてあげられるね」  「…………うん」  それから、雪の街中を歩きながら、遼は恋人繋ぎっていう言葉を教えてくれ、握ったままの手をそっとブルゾンのコートに導いた。  必然的に密着するわたしの肩に遼のもう一方の手がぽすんと置かれる。  「志穂、もっとあったかくなった?」  うん……あったかいよ…遼……。  ぼうっとしてクラクラして、夢みたいで、わたしはただただこくこくと頷いた。
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