第1話

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第1話

第1話『初雪と女王の仕事』 (12月21日の日記)  駅前から続くシャッター商店街は、ひと気がない。誰も通らない。  駅自体、電車は1時間に1本。アタシ以外誰も降りない。  12月に入り、日暮れがますます早くなって、どこもかしこも真っ暗なこの町で、駅舎とシャッター商店街だけは電灯に照らされている。  古びたシャッター商店街の中で、唯一一軒やっている小さな駄菓子屋で、放課後に一人、肉まんを買い食いするのが、アタシの冬の贅沢。  駄菓子屋のおばあちゃんは、アタシが子供の頃からおばあちゃんだった。  おばあちゃんは口数が少ないけれど、アタシが来ると、店の奥に置いていた木の丸椅子を抱えて出してきて、店内の石油ストーブのそばに置いてくれる。  アタシは石油ストーブの臭いも大好きだ。
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