第1話

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お金を払い、おばあちゃんから肉まんを受け取って、丸椅子に座って、はむ、と一口かじる。  口の中に広がる肉まんのあったかい味に、泣けてくるくらい生きてる心地がする。  アタシが子供の頃はまだ、このシャッター商店街の通りの、ずっと向こうまで、「雁木がんぎ」があった。  雁木っていうのは、簡単に言うと、店の前にあるアーケードみたいなもの。  冬場、雪が降り積もって、みんなが歩けなくなるのを防ぐため、商店街の店の前の歩道に沿って取り付けてある、頑丈な木の屋根。それが雁木だ。  ここの商店街の雁木は、屋根をトタンで補強されている。  雁木があるおかげで、人は雪を気にせず、各お店をめぐれるんだけど、雁木の素敵さはそれだけじゃない。
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