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いわく、文化祭のステージに小相木ここあがやってくる、と。
教室につくや、クルルンが近づいてきた。やわらかな笑みをたたえながら。
「おはよう。見ましたか、掲示板の告知」
「見たよ!! 文化祭の運営陣は良い仕事をするね!!」
「うふふ、よかったですわね、帆乃」
「うん、最高だよ!」
わがことのように喜んでくれたクルルンにつられてうれしい顔をしていたけれど、わたしは素直に喜びきれていなかったと感じる。いまいち喜べない理由はもう、はっきりと見えている。
ここさんに謝らないといけない。
彼女にあこがれ、彼女のようになりたいと願いながらも、いつからか完全にマネすることはさけていた。――そうだ、『彼女のように』なるのではなく、『彼女のように人からあこがれられる存在へ』なるべきなのだろう。そしていずれおんなじ場所に立つのであれば、小相木ここあのコピーでは、オリジナルがいるその音楽の世界では生き抜けない。
トートーの耳に入れば『トーシロがぶってんじゃねえ』なんて言われそうな話だから誰かに聞かせたことはないけどね。
ここさんはきっかけなのだ。だいじで、わたしの基盤をなしていて、今回、わたしはその基盤の脆弱さを知られた。言うならば、小相木ここあ、というブランドを借りていながら、そのていどの基盤しかつくりあげられなかった。そんな自分がふがいなく、罪悪感のもととなっている。
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