#01.求愛プリフェッチ

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 しかし、個人名義だけでなく、担当するキャラクター名義のものもあって枚数はかなりのものとなる。ゆえに小学生のおこづかいではどうしても限界があった。当時は泣く泣く試聴にとどめた作品も数多いが、いずれも高校に入ってからアルバイトをして購入できた。  ときおりラックに並べたそれらを眺めては悦に入っている。  小学生だったころのわたしはまだ聴き手側で、あくまでも与えられる側だった。そんなわたしが自ら創作して与える側になったきっかけは中学に入って間もなくのころ、小相木ここあ名義でリリースされた一枚のシングルにある。その歌にわたしのハートは撃ちぬかれたのだ。  彼女はその楽曲ではじめて作詞を担当していた。その詞の世界観は、登場人物の足あとからマシュマロが湧いて出てくるような、吐息からはバニラの香りがして、にぎりこぶしはわたがしにつつまれていくみたいな、現実感がなく夢のようなものだった。  感性がかたまっておらずふにゃふにゃだったわたしはもろに影響を受けることになる。  それからしばらくは、変身願望のとりこになった。  めがねを叩き割った。髪をブロンドに染め、コンタクトをつけ、まゆを整え、つけまつげを装着する。  加減をしくじり、女装した芸人のようになりながらもそれなりに満足していた。……当時の写真は見られない。周りの評価はひどいものだし、先生たちからはひどく叱られた。当然だね。
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