4人が本棚に入れています
本棚に追加
…………ただ、仲間うちでもめているだけならよかったのに……トートー、そんな言いかたはよくない。
聞き捨てならなかった。
席から立ち上がって壇上のここさんを見あげる。目礼を一度。
一歩踏み出してから最後にみんなを振り返る。
「わたし、いってくるね」
みんなは神妙な顔でうなずいて送り出してくれる。
心臓に寄り添うような熱感があった。心臓が肉体を駆動させる器官とするなら、この熱感は心を駆り立てるものに違いない。
わたしは燃えている。
――金輪際トートーに『アレ』とか『一応はプロ』なんて言わせてなるものか。小相木ここあの名を一生忘れさせないステージにしてやる。
後藤塔子よ、そこで見ていろ。
「こんなふうに呼び出してからたずねるのもアレなんだけど……弾けるかな?『phoenix』って曲、いけそう?」
「はい」
「あ、緊張しているね?」
「少しだけ。でも、だいじょうぶです」
緊張をしている自分を認めることで、それすら楽しむ余裕に変えるのだ。胸中の燃えるような熱感は衰えを知らない。緊張してこわばりそうな身体をその熱はあたたかくほぐす。
ついさっきにあわてて取ってきたドリーミーアリスをそっとなでる。
最初のコメントを投稿しよう!