#01.求愛プリフェッチ

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 わたしは猛反省したよ。  見た目だけでも清らかにしたわたしの自己表現の方向はそうしてついに内向きのやじるしへと転換する。詞を書こうと思ってからはあっという間だった。  わたしの書いた詞は歌詞の体裁を取っていて、当然、曲をつけようとした。けれど、作曲するにもわたしにはその手段がなく、音楽を始めるしかないと思ったものの楽器が必要あって、楽器を買うにはお金が必要だった。  両親に懇願し買ってもらえたギターをいまでも愛用している。ルークシェルコーポレーションのフライバイシーカー・カスタム『ドリーミーアリス』。  最初に持つとしてはあまりに高価なシロモノで(カスタムメイドだし)、両親の突き抜けた判断に驚きもした。家庭の財政的にだいじょうぶかとも思った。  そんなわたしの懸念を見通しながら言われたことはいまでも一字一句間違えずに思い出せる。 『がんばってどうにかならないことのほうが多い世の中だから、せめてここにいるうちくらいは、がんばりには報酬を与えてあげようと思うのよ。帆乃はがんばったんだものね?』  そりゃあ、わたしはがんばった。よい成績をとったのだ。母のその言葉と報酬は好循環の始めのサイクルとして充分に機能した。
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