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「やっとリラックスしてきたかな? 舞台上ではけっこう平気みたいだったのに、ここに来てまた緊張しちゃうんだもんなあ」
「さっきは、怒れてきちゃってたので……」
「そういえばあたしのことを一応のプロとかアレとか言ってたね」
「わたしはここさんがいちばん強いと思います!!」
「ん? つよ……ああ、褒めてくれているんだね、ありがとう。でも、反論はしておくよ。あたしがいちばんなんてことはない。きみがどれだけあたしを評価していても、あたしがいちばんなんてことは起こり得ないんだ。なぜならあたしにはすでに一生かかっても超えられないと認めた人物が存在しているから。きみにその名を告げても納得しないだろうから言わないけど、とにかくその人がいるかぎり、あたしはいちばんじゃないんだよ」
「そ、そんなこと、」
「でもね、あたし自身がいちばんになれなくても、きみが『この世界でいちばん小相木ここあを評価している人間』にならなれるかもしれない。そう、できたらずっとあたしのファンでいてくれるといいな」
「もちろんです!」
「いい返事だ」
ああ、その顔だ、その表情だ。わたしは思う。小相木ここあは表情で人を褒めるんだ。それは幼き日に見た、わたしを褒めそやす母親の表情だった。
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