#05.monophonic fairy tale

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 目もとをぬぐった制服のそでに付着するつけまつげ。 「わぁ」  ここさんは、ナミダを拭いたわたしの顔を見て戸惑いがちにちいさくつぶやく。  同時、ノックにつづいて「失礼します」と引き戸がすべる音がした。  顔を向ければ実行委員らしき男子生徒がそこにいて、わたしの目もとに視線を釘づけにしながら。 「えーと、ここにホノアカクサクのボーカル氏が来ているとうかがったのですが見えませんか?」  見えてる見えてるばっちり見てるしわたし見られてるけどどうしたのかな、フシアナなのかな。ここさんが笑いをこらえているのがひしひしと伝わってくる。 「さあ、知らないなあ」  ここさんが勝手に答えて「はっ、失礼しました」と男子生徒は立ち去った。 「メイク落とすだけで他人のフリができるなんてすごいよきみ!」 「……褒めてます? というかいつもの衣装ではないのは認めるけど、髪の色で充分すぎるヒントになったと思う」 「足りなかったみたいだね」  あの男子生徒の頭がかな、なんて口にするのはかわいい女子像からかけ離れているので思うのみにとどめておこう。  これはきっとあの男子生徒の小粋なジョークだったのだ。  そんなふうに結んでおくことにする。
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