#01.求愛プリフェッチ

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 初めてつくった曲と詞は、どこかで聴いたようなものだったからひとまずお蔵入りにしたけれどね。主旋律以外のパートの作曲が苦しすぎて自分には向いていないのではと気づきはじめ、中学も二年にあがったころに久遠くくる――クルルンと運命的な出会いを果たした。  クルルンの作曲センスに脱帽して、同時にホノアカクサクの雛形が見えはじめる。高校に入って、十六曲坂パトリシア――パティと西小岩華――バナっちのふたりにこれまた運命的に出会って、ホノアカクサクを結成するとまたたく間にけーおん部のなかで中心的な存在になっていった。  一度は封印した変身願望は解放されて、ブロンドどころか白地にピンクみたいなハチャメチャな感じにしちゃったけど気に入っているし文句も言われない。生徒指導の先生に何か言われそうになればけーおん部をやめると揺さぶりをかけていた。すでにわたしたち目当てに人が集まるレベルだったのだ。それに見た目以外で規律に反することはしていない。  そのあたりはわきまえていたんだけど、やっぱり調子にのっていたのは否定できない。  だから、あの去年の文化祭での後藤さん乱入騒ぎには鼻っぱしらをへし折られた気分だった。
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