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「失敗するならすればいいって気持ちもあったのか?」
「うーん、強いて言うなら、わが子を千尋の谷に落とす獅子みたいな――それは良く言いすぎか。どちらにしろあの娘が途中からやった曲――monophonic fairy taleにはいやな思い出があったし、それを思い出してしまって……あの娘に伝えたら重荷になるだろうからって、お礼とは名ばかりにきみに懺悔しにきたんだよ」
「聞くだけなら聞こう。あんたのパフォーマンスは良いほうではあったからな」
小相木さん、ついに苦笑い。
「助かるよ。聴いてもらったらわかるようにmonophonic fairy taleのCメロには伴奏がない。当時はまだまだ認知度が低かったあたしはプロデューサーの意向でライブハウスに立たされることが多くてね。そんなところでこの曲をやったら、このCメロの部分でどうしても、いろいろと聞こえてきちゃったんだよね。悪く言う声なんてものがさ。そうでなくても、たんなる会話だって、あたしの歌を聴いていない証明になってて、まだまだぜんぜん人を惹きつけられていないってへこんでた。――こんな思い出、あの娘からしたら知ったことじゃないだろうけどさ、そのときの自分とステージ上のあの娘を比べてしまって……ほら、すごく堂々とした歌いっぷりだったじゃない?」
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