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「こいつらが止めなければ」後藤さんはこちらを見やる。席を立ったおれたちは後藤さんのもとへと近づく。「しれっと弾ききってやるつもりだったんだがね。つかなんだよお前ら急に来て」
窪津くんと桜咲さんがそれぞれ座っている後藤さんの右と左の肩に手をのせた。
「いや、じつは、塔子がわめいたあのとき、肩をつかんだのは最初だけで、あとは添えてただけなんだよな」
「そうそう、わたしも裾には触ってただけだよ」
「…………は?」
おれは後藤さんのあぜんとした顔がおかしくて噴き出してしまった。
「窪津くんたちが自分の手を指してつかんでないのアピールしてきたからあやうく笑うとこだった」
「おま、おま、」後藤さんは二の句がつげずにふるえている。
「『ええい! とめてくれるなお前ら!』だっけ? いやー、迫真の演技でしたね癒々さん」
「はい、ハリウッド女優も真っ青ですね善冶さん」
「ふ……ふ……、」
「……後藤さん?」
「ふざけんな!!」
座席を蹴って鬼の形相でつかみかかる後藤さんからふたりは逃れるように理科室から飛び出した。
出入り口まで追いかけてからすごすごと席に戻る。なんかばつが悪いのも通りこして吹っ切れた表情である。小相木さんに向けて黒い笑み。
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