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「さっきのやりとりで後藤塔子さんの悪口は演技だと判明しました! さあ、おとなしく感謝されましょう!」
演技モードのよく通った声に、後藤さんはたじろぐ。
「お、おう……」
「今回はありがとうございましたっ!」
「ど、どういたしまして」
小相木さんは満足そうに笑うと席から立ち上がる。
「あの娘みたいな良いファンの人と交流できてうれしかったよ。ついでにきみに来月発売のニューシングル『sprout』を買っていただけるともっとうれしいな」
るんるんでそう言い残して小相木さんは去った。後藤さんはしばし呆然としてから乾いた笑みを浮かべる。おれも似たような表情をしていた。
「抜け目ねーなー。ねーわー。なーさーすーぎー。しかし、チェックくらいはしてやろう。その抜け目のなさに敬意を表してよう」
「心底同意するよ」
「お前はいっつもそうだろ」
ああ、そうだったとひどく納得してしまった。
非難する口調にもかかわらず、その表情からはまんざらでもないような感情を読み取ってみるってのは、ちょっと都合がよすぎるかね?
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