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#02.西小岩バナップル
後藤さんがアブラとケンカを売りに来たのは対バンの翌日のことだった。
わが校のけーおん部は人数が多く、部室ひとつではじゃっかんの手狭さを感じられた。
ゆえに部室がふたつ与えられていて、自然と男女に分かれるようになっていた。男女混成バンドはどちらの部室を使用してもよいので、そこまで厳格な決まりではないのだけれど。
わたしたちはその女性側部室の一角を専用スペースとして与えられていた。はじめはエンリョしていたわたしたちだったけど、いまはもうクッションやらお菓子やら化粧道具やら、衣装棚まで設置してやりたいほうだいだ。しかし、文句をつける者はいない。
さも当然のような顔をして入ってきた後藤さんは適当な椅子をひっぱってくると、わたしたちが普段いる、机をよっつくっつけたもののそばに陣取った。今日は手ぶらで、おでこには全休符が書かれている。というか全休符だと気づけた自分を褒めたい。一見すると大きなホクロみたいだった。
つぎの文化祭でやる予定の曲の練習中で席を離れていたわたしたちはとくに構うこともなく、そのままつづけて、ひと息つくほどの時間が経過しても後藤さんは離れなかった。休憩中に席に戻ったわたしはついに彼女の存在へ触れることにする。
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