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2話『女王と不動産屋の契約』12月19日日記
第2話『女王と不動産屋の契約』
(12月19日の日記)
アタシの町のシャッター商店街の寂れようは、見るも無惨だけれど、駅舎からシャッター商店街側に出ず、線路の反対側に出ると、線路に沿ってのびる県道の脇に、ファミレスやコンビニやケータイショップが並んでいるのだった。
つまり商店街側は、ダーウィンの進化論的に「世の中に適応できず、滅びた」。
アタシがバイトしている前田不動産は、世界に適応した側の、ファミレスとコンビニの間に建っている。
「おつかれさまでーす」とガラスのドアを開けると、前田社長が一人でパソコンに向かっている。
「待て待て、あいちゃん入ってくる前にさ、隣でコーヒー買ってきて?」
「はい」とアタシは、コンビニで入れたホットコーヒーのカップを社長に手渡す。
「わおなんとできた子でしょうホントこの子は」
アタシは制服の上に羽織ったコートのポケットから、ミルクとシュガースティックを取り出して、それも社長に手渡すと、自分の席にスクールバッグを置いて、どか。と大きな革張りの背もたれ椅子に腰をおろす。
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