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「そうだ。…いつまで笑ってんだっ!お前の家庭を心配して教えてやってんだぞ、俺は!」
「…すみません。とりあえずうちもないと思うんで大丈夫です」
咳払いで無理矢理笑いを噛み殺して、声を返した。
「そうか、俺の杞憂ならいいんだ。それで」
課長は短くなったタバコを、胸ポケットから取り出したケータイ灰皿に捩じ込むと、俺を見た。
「大事にしてやれよ。…何度も言うが、家族を守ってやれるのはお前だけだからな」
「はい。…胆に命じます」
いつになく真剣な眼差しに圧されて、俺も神妙に答える。
今日は早く帰れるようにしようと心に決めて、乗り込んだ車のハンドルを握りしめた。
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